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若紫一回目

(原文)日もいと長きにつれづれなれば、夕暮れのいたう霞みたるにまぎれて、かの小柴垣のもとに立ち出でたまふ。
(現代語訳)春はたいそう日も長いので、退屈なので、夕暮れのたいそう霞んでいるのにまぎれて、あの小柴垣のところへお出かけになられる。
(原文)人々はかへしたまひて、惟光の朝臣とのぞきたまへば、ただこの西面にしも、持仏すゑ奉りて行なふ尼なりけり。
(現代語訳)お供の人々はお返しになって、惟光の朝臣とおのぞきになると、見えたのはすぐ目の前の西向きの部屋に、持仏をお据え申し上げて、勤行している尼であった。
(原文)簾をすこし上げて、花奉るめり。
(現代語訳)簾を少し巻き上げて、仏に花をお供えするらしい。
(原文)中の柱に寄りゐて、脇息の上に経を置きて、いとなやましげに読みゐたる尼君、ただ人と見えず。 中の柱→部屋の中央の柱。
(現代語訳)部屋の中の柱に寄りかかり、脇息の上に経を置いて、ひどく苦しそうに読経している尼君は普通の身分の人とは思われない。
(原文)四十あまりばかりにて、いと白くあてに、痩せたれど、つらつきふくらかに、まみのほど、髪のうつくしげにそがれたる末も、なかなか長きよりも、こよなういまめかしきものかなとあはれに見たまふ。
(現代語訳)年齢は四十くらいで、たいそう白く、上品な感じで、やせているが、顔つきはふっくらしていて、目もとのあたり、髪がきれいに切りそろえられている端も、かえって、長い髪よりも当世風だなあとごらんになられる。