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雨夜の品定め、頭中将夕顔を語る三回目

(原文)「さて。その文の言葉は」と問ひたまへば、
(現代語訳)「それでは、その手紙にはどうのような内容でしたか。」とお尋ねになると、
(原文)「いやさ、異なることもなかりきや。
(現代語訳)「そうですね。特に変わったこともなかったです。
(原文)山がつの垣ほ荒るともをりをりにあはれはかけよ撫子の露」
(現代語訳)身分の低い山人の垣根は荒れようとも、たまには露のなさけをかけてやってください撫子の花に。 (卑しい私には冷淡にしても、子供はたまにかわいがってやってください)
(原文)思ひ出でしままに、まかりたりしかば、例の、うらもなきものから、いと物思ひ顔にて、
(現代語訳)この歌によって、思いだしたので、女の家に行きましたら、例のごとく、女は、裏も表もないものの(隔て心がないものの)たいそう物思いに沈んでいる様子で、
(原文)荒れたる家の露しげきをながめて、虫の音にきほへる気色、昔物語めきておぼえはべりし。
(現代語訳)荒れた家の露の深い庭をばんやりと見て、虫の声に負けじと泣いている様子は、昔の物語にでもある場面のように思われました。
(原文)咲くまじる花はいづれとわかねどもなほ常夏にしくものぞなき。
(現代語訳)庭に咲いてまじっている花は、どちらが美しいと優劣の区別はつけられないけれども、やはり撫子に及ばない。(あなたと娘のどちがが、よいかという優劣の区別はつけられないけれども、やはりあなたに及ぶものはない。)