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雨夜の品定め、頭中将夕顔を語る二回目

(原文)ただ朝夕にもてつけたらむありさまに見えて、心苦しかりしかば、頼めわたることなどもありきかし。
(現代語訳)ただ、いつもつらい気持ちを我慢している様子に見えて、気の毒に感じたので、ずっと私を頼りにすることなどを考えるように言う場合もあった。
(原文)親もなく心細げにて、さらばこの人こそはと、事にふれて思へるさまもらうたげなりき。
(現代語訳)女は親もいないし、心細い感じで、それならば、この人こそ頼りにするべき人だと何かにつけて、私を頼っている様子はかわいらしい。
(原文)かうのどけきにおだしくて、久しくまからざりしころ、この見たまふるわたりより情けなくうたてあることをなむ、さるたよりありて、かすめ言はせたりける。
(現代語訳)女がこのように、のんびりしているので、私もおだやかで、長く行かないでおりましたら、本妻から無情なひどいことを、あるついでがあって、この女に言わせたのでした。
(原文)後にこそ聞きはべりしか。
(現代語訳)それは後になって、聞いたのでした。
(原文)さる憂きことやあらむとも知らず、心には忘れずながら、消息などもせで、
(現代語訳)女にそんなつらいことがあろうとは知らず、私の心には忘れないでいながら、手紙などは出さずいましたところ、
(原文)久しくはべりしに、むげに思ひしをれて心細かりければ、
(現代語訳)長いこと過ごしていましたら、女はひどくがっかりして、心細かったので、
(原文)幼き者などもありしに、思ひわづらひて、撫子の花を折りておこせたりし。」とて、涙ぐみたり。
(現代語訳)幼い子などがあったので、思い悩んで、撫子の花を送ってよこしました。」といって、涙ぐんだ。