いづれの御時にか
| (原文)いづれの御時にか、女御・更衣あまたさぶらひたまひけるなかにいとやむごこなききはにはあらぬが、すぐれて時めきたまふありけり。
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- いづれの御時→どの天皇の御代。
- 女御→皇后、中宮の次の位の后。二位か三位。
- 更衣→女御の次の位。四位か五位
- さぶらひ→高貴な人にお仕えする。
- やむごとなし→身分が高い。
- きは→身分。
- 時めく→寵愛を受ける。
(現代語訳)どの天皇の御代であったか、女御や更衣がたくさんお仕えなさっている中にたいそう身分が高いとはいえないが、きわだって、帝の寵愛を受けられる方がいた。
| (原文)はじめよりわれはと思ひあがりたまへる御方々めざましき者におとしめそねみたまふ。
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- はじめ→入内の最初から。
- 思ひあがる→自分が帝の寵愛を受けるという自信を持っているということ。
- めざましき→善悪両方に用いるがここでは悪で「気にくわない」
- おとしむ→さげすむ。
- そねむ→嫉妬する。
(現代語訳)入内の最初から自分こそは帝の寵愛を受けられると自信満々の方々は気にくわない者としてさげすみ嫉妬なさった。
| (原文)おなじほど、それより下らうの更衣たちはまして、安からず。
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- おなじほど→桐壺の更衣と同じ身分。
- 下らう→身分の低い者。「らう」は僧が授戒してから修行を積んだ年数をいう。
- 安い→心が穏やか。
(現代語訳)同じ身分のの者たちや、ましてそれより身分の低い更衣たちは心が穏やかでない。
| (原文)朝夕の宮仕へにつけても人の心をのみ動かし、恨みを負ふつもりにやありけむ、
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つもり→積み重なるという意味の名詞。
(現代語訳)朝晩のおつとめにつけても、他人の心ばかり騒がせ。恨みを受けて、その恨みが積み重なったせいであろうか、
| (原文)いとあつしくなりゆき、もの心細げに里がちなるを、 |
- あつしく→病弱になる。
- もの心細げに→何となく心細い気分に。
- 里がち→実家に帰りがち。
(現代語訳)たいそう病弱になっていき、何となく心細い気分で実家に帰りがちになっていった。